コロナウイルスによる採用市場への影響と今後の見通し
2020年4月、コロナウイルス感染拡大防止のため、首都圏から全国へと広がった緊急事態宣言。これにより、一部の企業では、一時的な採用凍結、延期といった採用活動を縮小する動きが見られます。そうした背景もあり、転職サイトの企業掲載件数は減少傾向にある一方で、雇い止めや退職勧告によって求職者数が増えたことでPV数は上昇しています。
つまり、サイト内の求人倍率が下がっている今だからこそ、掲載効果がアップしている企業も増えているということ。倒産、事業規模縮小といったニュースも多く、現状、今後の見通しを考えることは非常に厳しいかもしれません。しかし、「求人」に関して言えば、ライバルが減り、自社に優秀な人材を迎え入れるチャンスが広がっているという見方もできるというわけです。今回は、コロナウイルスの影響による採用市場の現状から、コロナ収束後の見通しについて考察します。
コロナによる採用活動はどう変化しているのか
東京商工リサーチが発表している「新型コロナウイルス」関連倒産状況(2020年5月1日現在)によると、新型コロナウイルスの影響で倒産をしている企業は、2月から4月にかけて大幅に増加しています。2月の時点では2件でしたが、3月は約11.5倍の23件、さらに4月は84件となり、3月の約3.7倍、2月の42倍という結果です。また5月はわずか1日で5件と、4月を大幅に上回るスピードとなりました。
詳しい内訳を業種別に見ると、宿泊業が26件で突出していて、これに続いて飲食業(16件)、アパレル関連(10件)。この結果からインバウンド需要や外出自粛による影響を直接的に受ける業種が際立っていますが、4月はほかに食品製造業、サービス・娯楽業などの倒産も増加傾向にありました。緊急事態宣言が2020年5月いっぱいまで延長されることとなった今、倒産する企業は今後さらに増加することでしょう。
上記の業種においては、今後しばらく求人数が増加する期待は薄いかもしれません。しかし、それ以外の業種ではどうなっているのでしょう。次の項では、転職サイトでの企業側、求職者の動きから、採用活動の現状を見ていきます。
2020年4月の転職サイト企業掲載数は同年2月の約65%
新型コロナウイルスの影響が薄かった2月、海外では外出禁止令を出す国が出始めた3月、そして国内でも緊急事態宣言が発令された4月と、経済にも急速な変化が訪れています。それぞれの月で求人サイトでの企業掲載数がどういった変化をしているのでしょうか。
まず、全業種での企業掲載数を見てみましょう。2020年現在、2月の掲載数を100%とした場合、3月の掲載数は90.13%とそれほど大きな落ち込みはありません。しかし、続く4月の掲載数を比較すると2月に対して64.88%と大幅な落ち込みを示しています。ちなみに前年の同月比は93.89%であり、今年度の激減は明らかに新型コロナの影響が出ているといってよいでしょう。
次に業種ごとの状況です。2020年4月の掲載数と同年2月を比較すると、特に落ち込んでいるのは、「クリエイティブ(48.39%減) 」「販売・フード・アミューズメント(45.14%減)」「美容・ブライダル・ホテル・交通(44.30%減)」 。反対に落ち込みが少ないのは、「Web・インターネット・ゲーム(12.50%減)」「企画・経営(13.56%減)」「医薬・食品・化学・素材(14.81%減)」「コンサルタント・金融・不動産専門職(16.07%減)」となっています(自社調べ)。
この結果から見てもやはり、倒産数が多い「ホテル」、「飲食」、「アミューズメント」といった業種は、求人サイトへの掲載数が減少していることが分かります。
求人倍率の低下により、効果アップの企業が増加
では、求職者の視点では、どのような変化があるのでしょうか。2~4月における求人サイトのPV数や応募数の状況を見てみましょう。
転職サイトPV数は増加(前年比)、応募数は横ばい傾向
倒産する企業が増加傾向にあるものの、2020年2月を100とした4月のPV数は全業種で80.09%と大きく減少。ただし、前年4月と比較すると、123.95%と増加していました。さらに、3月の前年比では148.45%と大幅に増加しているところを見ると、昨年よりも転職先を探している人はかなり増加していると言えます。
業種別に見ると、2020年4月のPV数が2月を超えているのは、「公共サービス(176.11%増)」、「企画・経営(15.54%増)」「医薬・食品・化学・素材(8.32%増)」の3業種。逆に同時期での比較で減少幅が大きいのは「WEB・インターネット・ゲーム(41.28%減)」「販売・フード・アミューズメント(33.32%減)」、「技能工・設備・配送・農林水産 他(33.07%減)」 の3業種です。
応募数においては、大きな差はなく、ほぼ横ばい傾向です。一部、PV数が増加している業種は前年より応募が増えている傾向にあり、それ以外では倒産件数の多い業種である「販売・フード・アミューズメント」が前年比103%となり、わずかながら増加。その一方で、同じサービス業である「美容・ブライダル・ホテル・交通」は、前年比72%となっています。応募者数とコロナ禍による企業の現状は必ずしも一致していないようです。
コロナ収束後、迅速に採用活動を行っていくためのポイント
非常事態宣言下では、求職者を集めたセミナーや集団での面接といった採用活動は難しい状況にあります。非常事態宣言が解除されたとしても、以前のような対面型の採用活動を行うにはまだまだ時間が必要でしょう。
しかし、だからといって採用活動を完全にストップする必要はなく、今後のための布石をしっかり打っておくことが大切です。とはいえ、対面や集団での面接、説明会が厳しいといった現状において、これまでとは違う方法で採用活動を検討しなければいけません。
ポイントとなるのは、対面による感染リスクを高めないプランです。
例えば、メールやWeb会議システムといったオンラインを活用して、説明会や面接を行うのもひとつの方法でしょう。採用前に、一度は対面で会いたいということであれば、最終面接時だけ個別に出社してもらい、面接に使う部屋のドアノブや椅子、机の消毒をしたうえで、3密をつくらない工夫を取り入れてみましょう。もちろん、面接対象者についても、事前に最善の注意を払ってもらうような連絡は欠かせません。また、万が一の体調不良に備えて、臨機応変に対応するための情報共有システムを用意しておくのもよいでしょう。
従来のように集団での対応ができないため、求職者一人ひとりにかける時間が長くなりますが、その分、より深い話が聞ける可能性もあります。今後の情勢を踏まえても、今からオンラインでの採用活動を行う準備をしておくことをおすすめします。
今から始める準備がコロナ後の成約数アップにつながる
非常事態宣言によって経済活動への影響が不安視されるなか、求人に関する状況も見えてきました。コロナの影響で採用縮小になっている企業もありますが、案件数だけで見ると影響が少ない業種も少なからず存在しています。
今後、ますます厳しい状況に追い込まれることも予測できるなか、採用活動を始めることは容易ではないでしょう。しかし、求人サイトへの応募数データを見ると、決して大幅に落ち込んでいるわけではありません。求職者が動いているのは事実であり、掲載企業数の減少によって、ライバルが少ない状態での求人広告が可能となっています。
コロナが収束するころには、様子をうかがっていた求職者がさらに動き出し、同時に他企業の採用活動も再開されるでしょう。厳しい状況ではありますが、いまからコロナ終息後に備え、準備をしておくことがコロナを乗り越えたときに勝てるポイントかもしれません。
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